1年生のたし算あそびの授業記録です。好きな数から始めて、たし算を17回くり返すだけ。それなのに、クラス全員の答えがぴったり同じ数になる。「え、なんで?」から、子どもたちが自分で計算を始めたくなった授業です。
どんなネタか
② クラス全員、同じ数(たとえば5)にします。
③ からは、すぐ上の2つの数をたして、一の位だけを書きます。
そのまま ⑰ まで続けます。
たとえば①を2、②を5にすると、2+5で③は7、5+7は12なので④は2、7+2で⑤は9、2+9は11なので⑥は1、9+1で⑦は0。こうして⑰まで続けます。
①は一人ひとりちがう数を選んでいるので、途中の数もばらばらになります。ところが——
授業の流れ
1. 黒板でやり方を確かめる
まず黒板では①を2にして、みんなで確かめながら進めました。一の位だけを書くというルールは、1年生にはくり上がりの練習にもなります。
2. 自分の選んだ①で⑰まで書く
やり方がわかったら、自分の選んだ①で⑰まで書いてもらい、発表してもらいました。
ここで私が、わざとこう言ってみます。
すると、
と、ほかの数を選んだ子たちからも一斉に手が挙がりました。①の数はみんなちがうのに、⑰だけが全員5になる。教室が少しざわつきました。
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ① | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
| ② | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 |
| ③ | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 |
| ④ | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
| ⑤ | 7 | 9 | 1 | 3 | 5 | 7 | 9 | 1 | 3 |
| ⑥ | 8 | 1 | 4 | 7 | 0 | 3 | 6 | 9 | 2 |
| ⑦ | 5 | 0 | 5 | 0 | 5 | 0 | 5 | 0 | 5 |
| ⑧ | 3 | 1 | 9 | 7 | 5 | 3 | 1 | 9 | 7 |
| ⑨ | 8 | 1 | 4 | 7 | 0 | 3 | 6 | 9 | 2 |
| ⑩ | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
| ⑪ | 9 | 3 | 7 | 1 | 5 | 9 | 3 | 7 | 1 |
| ⑫ | 0 | 5 | 0 | 5 | 0 | 5 | 0 | 5 | 0 |
| ⑬ | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
| ⑭ | 9 | 3 | 7 | 1 | 5 | 9 | 3 | 7 | 1 |
| ⑮ | 8 | 1 | 4 | 7 | 0 | 3 | 6 | 9 | 2 |
| ⑯ | 7 | 4 | 1 | 8 | 5 | 2 | 9 | 6 | 3 |
| ⑰ | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 |
①がちがっても、⑰はぜんぶ5になる(②は5のとき)
3. 子どもが理由を探し始める
すると、一人の子が言いました。
それを受けて、別の子が続けます。
4. 予想を立てて、確かめる
さっそく②を2にして、もう一度⑰まで計算しました。予想は「⑰はぜんぶ2になる」。
ところが、出てきたのはぜんぶ4でした。①が1でも、2でも、9でも、⑰は4です。
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ① | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
| ② | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 |
| ③ | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | 1 |
| ④ | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | 1 | 2 | 3 |
| ⑤ | 8 | 0 | 2 | 4 | 6 | 8 | 0 | 2 | 4 |
| ⑥ | 3 | 6 | 9 | 2 | 5 | 8 | 1 | 4 | 7 |
| ⑦ | 1 | 6 | 1 | 6 | 1 | 6 | 1 | 6 | 1 |
| ⑧ | 4 | 2 | 0 | 8 | 6 | 4 | 2 | 0 | 8 |
| ⑨ | 5 | 8 | 1 | 4 | 7 | 0 | 3 | 6 | 9 |
| ⑩ | 9 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
| ⑪ | 4 | 8 | 2 | 6 | 0 | 4 | 8 | 2 | 6 |
| ⑫ | 3 | 8 | 3 | 8 | 3 | 8 | 3 | 8 | 3 |
| ⑬ | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 0 | 9 |
| ⑭ | 0 | 4 | 8 | 2 | 6 | 0 | 4 | 8 | 2 |
| ⑮ | 7 | 0 | 3 | 6 | 9 | 2 | 5 | 8 | 1 |
| ⑯ | 7 | 4 | 1 | 8 | 5 | 2 | 9 | 6 | 3 |
| ⑰ | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
②を2にすると、⑰はぜんぶ4になる(2ではない)
予想が外れた瞬間、子どもたちはまたまた夢中になります。授業の終わりには、「②をほかの数にしてみたい」「①を10以上にしたらどうなる?」「0だったら?」と、次にやってみたいことが次々に出てきました。黒板の右端に「自学でやるなら」として書き残してあります。
このネタで大切にしていること
計算ドリルを1ページやれば、たし算の練習は同じくらいできます。でも「②を3にしたら⑰は何になるんだろう」と思いながらたし算をするのと、ただ順番に問題を解いていくのとでは、同じ計算でも頭の動き方がまったくちがいます。
知りたいことがあって計算する。予想が当たるか外れるかを楽しみに計算する。そういう計算を、1年生のうちからたくさん経験してほしいと思っています。
授業で使うときのポイント
- ②はクラス全員そろえる。ここがそろっていないと、⑰もそろいません。①だけを自由にするのがこのネタの肝です。
- 「計算ミスじゃない?」とゆさぶる。教師が疑ってみせることで、子どもが「ちがう、ぼくも5だった」と根拠を持って反論しはじめます。
- 「②を変えたら?」は子どもから出るのを待つ。出てこなければ「①を変えたのに同じだったね」とつぶやくだけで十分です。
- 予想が外れることを大事にする。「②が2なら⑰も2」という予想が外れた瞬間が、いちばん子どもが前のめりになった場面でした。
- くり上がりの練習になる。一の位だけを書くので、自然とくり上がりのあるたし算をくり返すことになります。
⑰の数は、②の数を7倍した一の位になります。②が5なら 7×5=35 で⑰は5、②が2なら 7×2=14 で⑰は4です。①が何であっても結果に影響しません。
②ごとの⑰は次のとおりです。 ②=0→⑰=0 / 1→7 / 2→4 / 3→1 / 4→8 / 5→5 / 6→2 / 7→9 / 8→6 / 9→3。
(フィボナッチ数列と同じ増え方をするため、⑰では①にかかる数が610、②にかかる数が987になります。610の一の位は0なので①が消え、987の一の位は7だけが残ります。)
授業では扱っていませんが、子どもたちから出た「①を10以上にしたら」「②を0にしたら」は、そのまま自主学習の課題になります。①を10以上にしても一の位しか使わないため結果は変わらない、という確かめも面白いところです。